第十三回 「白秋会吟行句会」 報告
期 日 平成二十四年五月二十五日(金)
吟行先 根岸 「子規庵」
会 場 鶯谷 「笹乃雪」
出句2句、選句3句、(内特選◎は2点)
天◎◎◎○
地◎○○○○
人○○○○○
人◎○○○
◎◎
◎○
◎○
○○
○○
○○
◎
◎
◎
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○
○
あにさんと律の声する麦湯かな
子規庵や絶筆三句五月雨
子規庵の軒端は深し青葉雨
病む子規の小庭に咲くや十薬草
切れぬ痰子規庵にゐる走り梅雨
子規庵に蚊遣り一筋小糠雨
羽二重の名もなつかしや夏きざす
現世にたたずむ子規庵薔薇咲く
子規庵の雨の軽さ紫蘭かな
子規庵の黒板塀や庭若葉
風薫る根岸の里や笹乃雪
子規庵の紫蘭を愛でつ句友どち
百年の子規庵今日の茂りかな
子規庵の四季咲く花に糸瓜あり
はつ夏や子規の庵を賑はして
人多し昔青田の根津の里
正二
秀雄
勝彦
正二
宙
宙
ひさき
ひさき
峻山
秀雄
壱游
峻山
勝彦
一宇
壱游
邑雪
《活動報告》
第13回白秋会吟行句会の参加者は12名、鶯谷駅に集合後そぼ降る雨の中、近代俳句の祖である正岡子規が晩年を過ごした子規庵を訪れた。
その古い木造平屋の家屋は修復されつつ、明治大正昭和という100年の時の流れをつなぎ、今も往時の面影を伝えている。母八重と妹律の小部屋の向こうに8畳と6畳間があり、その縁側から緑に輝く庭が見える。一面夏草の中、彩りといえばわずかに紫蘭の紫小さなバラの花の薄いピンクのみ、有名な糸瓜の棚はまだ苗が伸び始めたばかりで花には早すぎた。「病床六尺」から、この様な自然のままのなんの変哲もない小庭を眺めながら、数々の名句を生んだ子規の天才を思う。印象的なのはその6畳間に庭向きに置かれた子規の文机。中央に小さな切り込みがあり、不自由な体の子規はそこに立膝を入れたまま書き物をしたという。遠い昔でありながら、その時の子規の姿が眼前に浮かぶようであった。
その後近くにある、寛永寺門主の隠居所であったという「根岸薬師堂」へ。上野の山の戦争により焼失したため、古い石碑にその名残をわずかに留めていた。ここで 羽二重団子へ夜グループと分かれたが間もなく今日の句会の会場である「笹乃雪」に集合した。ここは創業三百年の、子規も通ったという豆腐料理の老舗。玄関の植え込みには子規直筆の「水無月や根岸涼しき篠の雪」の句碑が建っている。
句会は二階の、俳句の里にふさわしい落ち着いた雰囲気の大広間で開かれた。正二さんが芭蕉の故郷伊賀上野から取り寄せて下さった、こちらも創業三百年老舗の、「紅梅堂」の銘菓、芭蕉の句にちなんだ「さまざま桜」を頂きながら、まさに俳句三昧の環境に浸りつつ、それ故か次々と佳句が出された。その結果は上記である。
活発な合評の後、懇親会は同じ部屋で開催、表彰式を含め、美味しい豆腐料理の数々に舌鼓を打ちながらいつまでも歓談は続いた。(白秋会幹事 中島勝彦)